平成25年度事例Ⅳ 支払利息はなんで計上するの?
平成25年度事例Ⅳ 第2問の支払利息問題について回答
平成25年度の事例Ⅳの過去問を解いてみて、以下疑問に感じたことはなかったでしょうか。
平成25年以外の試験では、支払利息を計上せずに営業キャッシュフロー計算をして、NPVを出している解答が多いけど、何で平成25年度は営業キャッシュフロー計算に支払利息を計上しているのだろう。
結論から先にお話しをしますと割引計算がないから(割引率の提示がない)と実際の現金有高を算出したい試験委員の意図があるからです。
以下の記事では、事例Ⅳが苦手だった記事トラが合格の為に過去問を検討し尽くし、財務・会計の合格点の獲得までに至った考え方を紹介します。答えがない2次試験において、合格の近道に繋がります。
受験当時、販売テキストが物凄く不親切で困った経験がございますので、支払利息計上が何故されるのかがよくわからない方は是非最後まで読んでください。
記事トラも初めての受験時は、支払利息の加味する意味が分からず失敗しました。NPVにも繋がる考え方ですので、是非克服していきましょう。
この記事はこんな方におすすめ
・平成25年度の事例Ⅳのテキスト解説を読んでもよくわからない受験生
・多年度受験だけど過去の記事トラの様に理解を曖昧にしている方
NPV計算の支払利息の扱いから考えてみる
まず、NPV計算の時に何故割引率があるか考えてみたことがありますでしょうか。投資する際には、お金はふと出てこないかと思います。通常は、株主の投資か金融機関などの借入金から資金を賄います。割引率には資金を用意した際に発生した投資から得られる収益(投資家の求める期待収益)や借入から発生する利息があるため、割引をされます。(資金調達のためのコストが発生します)
資金調達のために発生したコストを割引率として、通常のNPV計算問題が出題されます。
ポイントは、割引率の中には支払利息などの負債コストが含まれているということです。つまり、通常のNPV計算の問題では、与えられた条件から算出されたキャッシュフローに割引率や資本コスト、WACCを使って、NPVを算出します。一方、平成25年度の場合は、他の年度とは異なり、割引率等の条件や投資の経済性評価を問うていないという特徴があります。
ちなみに、テキストで記載(1次試験の出題)のWACCの求め方でも図の数値は算出できます。負債コスト:5%×60%+自己資本コスト:2%×40%=3.8%(WACC)
平成25年度が支払利息を営業CFに加味している理由
まずは、平成25年度の問2の前提条件と設問を確認しましょう。
植物工場は開業資金として、D 社から 100 百万円を受け入れ、工場自身で 50 百万円を調達する。調達の方法は金融機関から借り入れる(金利年4%、年 10 百万円を各期末に返済)か、少人数私募債(金利年4%、第5期末に一括返済)が検討されている。返済が完了すると同時に、再び同額を借り入れるものとする。栽培設備設置などに 100 百万円の投資が必要であり、これらは開業までに投資、建設され、開業第期首から設備を稼働させる。設備の耐用年数は5年であり、残存価額をゼロとする減価償却を行う。設備は第期末で同額の投資により更新が必要である。
栽培した植物は一定の品質が保証される限り、すべて生産した期に販売が行われるものとする。最大生産能力は売上高に換算して約 100 百万円/年であるが、軌道に乗るまでの第1期、2期は操業度を落とし、売上高をそれぞれ50 百万円、80 百万円とし、第期からは毎期 90 百万円を予定している。費用の構成は、変動費が各期売上高の 30 %、固定費が毎期 18 百万円と見積もられている。ただし、支払利息と減価償却費は別途計算する。
年間の営業キャッシュフローの累計額をb 欄に示せ:単位:百万円、小数点第位を四捨五入すること;。ただし、自身の資金調達は金融機関からの借り入れとし、取引はすべて現金で行われると仮定する。また、法人税率は 40 %、欠損金の繰延控除は考慮しないものとする。
(出題の趣旨)
異なる減価償却方法に応じた各期の減価償却費を算出する能力、およびこれにより生じる営業キャッシュフローの違いを算出する能力を問う問題である。
平成25年度の問題ですが、出題の趣旨から見てわかるように、NPVを求めさせるわけではなく、営業キャッシュフローの算出を求めているということがわかります。差額キャッシュフローやフリーキャッシュフロー、営業キャッシュフローから投資の評価ではなく、減価償却費の定額法と定率法による取り扱いでキャッシュフローはどの様に違うの?ということを聞いている問題でした。
また、第2問の前提条件の末尾にも支払利息と減価償却費は別途計算すると記載し、キャッシュフローを算出して欲しいという試験委員のメッセージが伝わってきます。極めつけは、設問3で借入した場合と少人数私募債を使用した場合のキャッシュフローの違いを問題にしてました。しかも投資の評価ではなく、現金有高を問うてます。
前提条件と問題文からキャッシュフローの算出を問うているかどうかに気づくのは、80分の中では難しいですよね。このような問題にあった時の対策も考えてましたので紹介します。
①設問を見たときに割引率や資本コストが提示されているか
②投資の経済性を問うているかどうか。投資の効果を聞いているか。
②キャッシュフローの算出のみを問うているかどうか。WACC等を次の問題で問うてきたら、平成30年度の様にWACCを使用して投資の評価をさせる可能性がありますので、注意が必要です。
③2重で割引くことは基本的におかしいので、自分の立てた筋道が2重で割引している計算結果になっていないか。2重での割引が発生しているようであれば、自分の前提条件を疑ってください。⇒支払利息を計算に加味している可能性があります。本当に支払利息を入れる必要があるか今一度確認してみてください。
平成24年度事例Ⅳの第1問設問3では、第3問設問1では、割引率や負債・自己資本コストの前提条件があり、支払利息を加味しないキャッシュフローで答えを出しております。支払利息は割引率に入っているという前提があるから、キャッシュフローにはマイナス計上していないということになります。
平成25年度支払利息含める問題のまとめ
中小企業診断士2次試験は、出題意図を曖昧にして、実務に近い形でどの様に判断するのかを常に問うてきます。1次試験の様に明確な答えはなく、2次試験のテキストの解説もよくわからないという問題が常に悩みとしてあります。平成25年度についても、平成24年度は、差額キャッシュフローからの旅館リニューアルの投資の経済性評価をさせてきたけども25年度は電卓をたたく正確性を問われる試験にガラッと変わってしまいました。記事トラの恩師が、サッカーの練習をして試合に臨んだらラグビーの会場だったと冗談を言っていたほど、問われる内容が変わった年度でもあります。
どの様な問題が問われるかは当日になってみないと分かりませんが、今までの過去問で問われていることの意味(支払利息の取り扱い等)を分かっていると自ずと解答が導けるようになります。今後もつまずいたポイントの解説を記事にしていきたいと思います。
正直テキストにも詳しく書いていないので、割引率の意味って分かり辛い。今後も受験当時を思い出し、分かり辛かった部分を記事にしていきますので、ご期待ください(=^・^=)